KTC製オートバイ用チェーンツール(MCCU14)のお話し


我が家のカタナ号と我がカローラ号(GPz1100)もチェーンが伸びてしまって,交換が必要になった.
実家の大阪なら行き付けのショップの好意で格安工賃で作業してくれてたけど,熊本に転勤に
なってからバイク屋さんって行ったことないし,交換工賃を見てビックリなんてのもバカらしい.

で,どうしようか悩んだ結果,これまでも足回りの改造をするときなんかに,チェーンを自分で
切ったり,つないだり出来たらいいなあって思ってたんで,思い切ってチェーンツールを買うことにした.

さて,チェーンツールといってもピン・キリで,安いものだと1万円もしないモノから4万円以上
するモノとイロイロ.
低価格といえばナ○カイ部品製で6500円位.でもこいつは強度がなく,ヘタに使えばすぐ壊れる
てのがもっぱらの噂・・・.そう言えばナン○イ部品箕面店の店員さんが

「慎重に使えば何回かは使えるので割安ですよ」

とか言ってたっけ.
ナン○イだけあって何回かしか使えないの?(オヤジギャグかなあ).

丈夫でプロご用達と言えば特工(特殊工具)で有名なHASCO(ハスコー)で,価格もその分高く,
4万円以上するのでプライベーターにはちょっと・・・・.
他には国産メジャーメーカーのKTC(京都機械工具)や,チェーンメーカーのRKやDID,レジーナ
からも出てるみたい.

で結局,価格と品質のバランスの取れた(と思われる)KTC製のチェーンツール(MCCU14)を
選んでみた.
今回はその紹介と使い方についてのメーカーとのやり取りについて,ちょっとばかりお話を・・・.



KTC製ドライブチェーンツール「MCCU14」

CAU13・CAU11 の後継モデルとして2003年3月に
作業性と品質を見直し発売されたモノ.

「KTC=高品質・高信頼」と私は勝手に思ってます.

ネットで一番安く購入できる所を探したら,なんと沖縄の
ショップでした.

ちなみに送料・消費税込みで23800円也


下の写真が前モデルのCAU13.
どんな風に作業性が改良されたかは??ですが,
野暮ったさはなくなってます.
(ちゅ〜か,前モデルのブサイクなこと!!)

写真はカタログから引用


 使用する部品が作業中に外れないように各部にOリングが付いている.この辺りは良く出来ていると思う.



カシメピンを抜く際に使用する部品.

左からインナボルト,カッタピン.

インナボルト内にはベアリングが内蔵されていて
カッタピンが押し付けれられても磨耗しないように
なっている.

う〜ん,設計者を誉めてあげたい.



古いチェーンを外す=圧入ピンを抜くには
インナボルトにカッタピンをセットし,カットガイドと共に
本体にセットする.



ラチェトレンチでインナボルトを締め込むと簡単に
圧入ピンが抜け,チェーンが外れる.



新しいチェーンをセットする際に,圧入プレートが
隣りのチェンのプレートに接するまで圧入させれば,
ジョイントプレートが正しい位置にセットされるように
なっている.

他のツールはどうなってるのかなあ??



かしめピンを本体にセットし,圧入したプレートが
抜けないようにピンをかしめる.



ジョイントピンのかしめは,付属のハンドルを回して
行なう.

アウタボルトの穴にハンドルを入るようになってるけど
長さがピッタリなので,しっかり入れないと掛かりが
悪くなり,穴をコジ広げてしまいそうでちょっと不安が残る.

もう少し長くてもいいんじゃあないの,KTCさん.


ここからが,今回の本題です.

これがなければ,単なるKTCツールの宣伝ネタです.

そんな訳がありません!!

さて,かしめる際の注意として説明書には
「広げすぎはクラックの原因となりますので注意して
作業してください」
と書いてある.

で,広げすぎってどれくらい??


実は・・・・,

初めて使う工具なんで,慎重にかしめたんですが・・・・.

一回目(右)は問題なかったんですが,二回目は
「パキッ」と嫌な音がしたと思ったら.クラックが
入ってしまいました.


せっかく,いいモノなのにこのままでは安心して作業できません.
分からない事はメーカーに直接聞くのが一番.
おまけにKTCさんには「お客様窓口(ものづくり/お客様センター)」っていうのが
あるじゃあないですか!!

「ものづくり/お客様センター」

お〜,この言葉の響きは,モノ作りをするユーザーの立場になって
親身に相談にのってくれる,まるで,水戸黄門様のよう. そんな雰囲気を無言の内に
かもし出しています.

これはかなり期待できそうです.

一流メーカーさんなんで,きっと的確に答えてくれると信じて早速電話してみました.

以下は,その時の電話のやりとりです.
長いので興味のある方だけ読んでください.




KTCのAさん: ハイ,お客様センターです.(人の良さそうな年配の方でした)

私:先日,チェーンツールMCCU14を購入したんですが, その使い方について教えて欲しくて
電話しました.

KTCのAさん: お買い上げ頂きましてありがとうございます.どのようなお話でしょうか.
(優しいおじさんっぽくて,かなり良い感じです.ただこういった人はシビアな話になると
アバウト過ぎる事が多々あるのでちょっと用心して・・・と)

私:チェーンをかしめる時にかしめ過ぎてクラックが入ってしまったんですが,どれくらい
かしめればいいか教えて欲しいのですが.

 KTCのAさん:あ〜, アレね.アレはかしめ過ぎると割れちゃうんですよ.
アレって,どれなのって感じ?)

私:ええ,説明書にも注意書きとしてちゃんと載ってるのですが,どれくらいかしめてやれば
いいのですか?

 KTCのAさん:そうですね,広げすぎると 割れるので割れない程度にかしめて下さい.

私:はぁ・・・・?? (この時点で既に,この人ではダメだと確信した)
割れない程度
ってどれくらいですか?

KTCのAさん:それは何回か経験されれば,わかると思いますよ.かしめるって言っても,ちょっと
かしめればいいんですよ.でも割れるのはマズイですねえ.

 私:はぁ・・・・・???
(おいおい,経験を積むとか積まんとかの問題か?

ちょっと,キレかけたけど,落ち着いて)

でも,それじゃあ,経験積むまでの間は,不確かな作業をしないとダメじゃあないですか.
おまけに,いつになったらOKって分かるんです?
そんなことして事故でも起こったら信用なくなるので,ちゃんとしたものを教えてください.

KTCのAさん:えっ,え〜・・・・.ちょっと設計者に確認してみますのでお時間を下さい.


一旦電話を切ったあと,5分ほどで私の携帯に電話が入った



KTCの設計者さん: チェーンツールのかしめについてお電話いただいたとのことですが.
設計者の方からだった.作った本人なら一番詳しいはずだ.きっと,まともな答えが
返ってくるぞ)

私:ハイ,かしめ過ぎてクラックが入ったので適正なかしめ量を教えて欲しいのですが.

KTCの設計者さん: 弊社では特にかしめ量というのはなくて,
割れない程度にかしめて頂いています.

 私:はぁ・・・・・??? (どいつもこいつも言う事同じか!!)
で,その割れない程度ってのはどれくらいなんですか?

KTCの設計者さん:前モデルも含めこれまで販売してきたんですが,そのような質問をされた事が無い
ので,特には指定は無いのですが・・・・・.

私:知り合いのバイク屋で使っているチェーンツールにはちゃんと「かしめゲージ」があって,
それでかしめ量を確認してましたよ.

KTCの設計者さん:かしめるピンの寸法にもバラツキがあって,チェーンメーカーさんも寸法を教えて
もらえないので決めるのが難しいんですよ.

私:難しいといっても,ちゃんとかしめゲージを付けてるメーカー(多分ハスコー製)があるん
ですよ.全く無理な話しではないと思うんですが.

KTCの設計者さん:う〜ん・・・・・.
それでは,オートバイのメーカーから出ているサービスマニュアルに載っているかしめ量を
参考にしてください.確かホンダさんのマニュアルには載っていたと思うんですが.

 私:はぁ・・・・・・・・・? (もう我慢できない)
あれって,ホンダが純正工具として認めたツールを使い,車種も限定しているものだけに
適用できるのであって,KTCさんのツールまで適用できないんじゃあないですか?
おまけに私のバイクはホンダ車ではないんですよ.

KTCの設計者さん:でも,チェーンメーカーも寸法を教えていただけないし,マニュアルを参考にしていただく
のが一番だと思うんですが.
(えっ?,自分の会社が作った工具を他社に任せるの?)


私:聞いていて,自社で生産・販売している商品なのに,何か他人任せにしているようにしか
聞こえないんですが.
工具を作ったのはKTCさんで,かしめる部分の設計もKTCさんがしたんでしょ.その形状や
寸法で適正なかしめ量も違ってくるんじゃあないですか.

だいいち,ホンダさんに今の話しを言ったら本田さんも怒ってきますよ.
もっと責任ある発言を聞きたくて電話しているんですから,こんな無責任な事では困ります.

KTCの設計者さん:はぁ・・・.
「はぁ・・・」って,そんなんで,どうすんのよ)

 私: (このままでは,ラチがあかん.聞き方を変えよう)
工具を開発・製作する際は,出来上がったものがちゃんと使えるか検証されるんですよね.

KTCの設計者さん:もちろん,ちゃんと行ないます.

私:では,このツールも,かしめがちゃんと出来たか検証したんですよね.

KTCの設計者さん:何度も何度も,かしめを行い確認しています.

私:では,その時の最適な条件を教えてください.

KTCの設計者さん:かしめ量に関しては公開していないんですよ.

 私:はあ??
「広げすぎは良くない」って,説明書にも書いていて,危険性も分かっていて,おまけに実際に
かしめ量がわからず,クラックが入って連絡しているのに,それでも公表できないってのは
おかしくありませんか?
危険性があれば正しい使い方を教えてくれるのがメーカーの責任だと思うのですが.
かしめ直すために余分にチェーンのコマを買いなおしてるんですよ!!

KTCの設計者さん:・・・・それは申し訳ありません.
・・・・・う〜ん.・・・・・う〜ん
・・・それでは,え〜・・・・参考値になりますが,それで宜しければお教えいたします.
すぐには分からないので,調べてすぐご連絡させていただきます.

私:宜しくお願いいたいします.


しばらくして,再び私の携帯に電話が入った



KTCの設計者さん:お待たせしました.え〜と.50(530)チェーンの 場合はかしめて広がった所の直径が
@@mmから@@mmで・・・・・,

私:申し訳ありませんが,電話で聞いて聞き間違えたりすると大変なので,メールで送って
いただけますか?(そう言って,メールで連絡してもらうようにした.)

ちなみに,これは参考値なんですか?
参考値では困るので正規の数値を教えてください.

KTCの設計者さん:はい,コレが正規のかしめ量です.




しばらくすると,丁寧なお詫びの挨拶と共に,
         各チェーンサイズのかしめ量がメールにて送られてきた.



う〜ん,ここまで分かるのに一時間近く掛かってしまった.

そんなデータがあるんだったら,最初から教えてよ〜!!



メーカーを擁護するつもりは無いけど,KTC製品の信頼性は間違いなく高い.
答えをもらうまでに時間がかかったのは,対面(といめん)に立つ担当者の理解度が低かった
だけだと思う.(でも,設計者なのにね)
が,しかし一担当者がそうであるならばKTC自身もそんな風土風習であった可能性は否定できない.

目標をしっかり持ち,安易に妥協しないメーカーほどその技術も高く,こちらの意思を理解する
能力を持ち,的確な対応と納得のいく回答をしてくれると思う.

そういった意味ではトヨタはよく出来た会社で,物事に対する取り組み方は間違いなく世界の
トップレベルだと思う.トヨタの営業マンのことを「高飛車で嫌い」と嫌がる方も結構いるようだが,
彼らへの教育レベルは非常に高く,肩を並べられる会社がどれだけあるだろうか.


説明書の表記内容や電話での応答で,その企業のレベルを垣間見る事ができると思う.企業でも
ISO(国際標準化機構)を取得し,品質の高さをアピールしようとしているし,電話対応や説明書
の充実などソフト面を重要な要素と考える企業は多い.
(「ISO@@@@取得=いい企業」じゃあ無いけどね.でも,そう思っている企業トップは多い)


いつまでも,「聞かれたことが無いから,特に決めていない」だとか「だいたい」や「割れない程度」
など曖昧な事を言っていては,今はトップでも,気付いたら後発メーカーに追い越されたなんてことに
なりかねない.

「KTC? ああ,昔は良い工具メーカーだったね」なんて言われない事を願います.

少し残念な出来事でしたが,こんな事があっても,私はスナップ・オンより

KTCが好きです.

頑張ってね.KTCさん



当たり前ですが,割れたかしめはちゃんとやり直しましたよ.部品代600円也

後から知ったけど,DID製のかし丸は1万数千円とチョーお手頃価格のツールでした.



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