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カワサキ マッハ750ssの割れた
 クランクケース・スタッドボルト穴の修理のお話 その2


群馬のマッハ750ss乗りの「ムラさん」の
割れたクランクケースのスタットボルト穴の修理のお話
の続編.
アルミ溶接で肉盛加工してブランク状態まで出来た
ケースのネジ穴加工のお話.

           



      スタッドボルトの位置(ピッチ)を知る必要があるのでスタッドボルトを取り付けます.
      その前にネジ穴にはネジロックなどのカスがあったのでタップでさらいます.
      (ムラさん,他の気筒も全部さらっておきましたよ)




ノギスでの計測ではピッチは59.9〜60.0mm
だったので内寸は60mm,スタッドボルトは
70mmピッチだと思われます.



他のスタッドボルトを取り付けそれを基準に
穴の明ける位置をけがいてポンチでマーキング
する.




さて,穴明けですが・・・.


今回のような修理では,所定の位置に正確にかつ垂直に穴を明けなければならず,それには
フライス盤が必要ですが残念ながら我が家にはそれがありません.

せっかくアルミの肉盛が出来てもネジ穴が正しく明けれなければ意味がありません.

で,今回もそれで悩みました.



どうしようかと悩んで・・・・.

鉄板に長ナットを溶接しそれをガイドに
ハンドドリルで穴を垂直に明けようと考えました.

何箇所かスタッドボルトの位置をケガいています


穴明けが終った鉄板とガイドにする長ナット.
長ナットは溶接のためメッキを削り落としています.

長ナットを溶接した鉄板をクランクケースに固定し・・・・・


          しかし・・・・・・


鉄板を使った治具で穴を明けることも可能なのですが
どうもエンジンに穴を明けるのに手作業でやる事自体に
抵抗があって,やはりある程度精度良く穴を明けるには
ボール盤でなければと思い取りやめました.

そこで棚用のアングル材があったのでこれで「やぐら」を
組んでそれにクランクケースを載せ,ボール盤にセット
できる様にしてみました.


アングル材は結構歪んでいるのでスコヤと直尺を使い
出来るだけ正確に組み上げる事を心掛けています.


トンボ(裏返し)してこの状態でボール盤に載せます.


載せるものが大きいのでアルミの板材をボール盤の
テーブルに載せます.

この状態でチャックにダイヤルゲージをセットして
前後左右で振れが無いか確認します.



クランクケースを載せた状態でもダイヤルゲージで
振れが無いかを確認しています.



      肝心の穴明けです.



不要になった細いタップの先端を研磨して,それを
チャックにくわえさせて穴の位置を合わせます.


尖らせたタップを外してセンタードリルと交換し
センター穴を明けています.



スタッドボルトがM10のためヘリサート穴も大きく
一度小径ドリルで下穴を明けています.


ヘリサートタップの規定サイズのドリルで穴明け


そのまま,ヘリサートタップ立てを行う.


ヘリサート挿入中.


挿入するときに失敗するのが,ピッチ飛び.

挿入するからといってハンドルを押さえ気味にして
挿入すると絶対にピッチ飛びをおこします.


挿入治具はしっかり押さえて,ハンドルはむしろ
引き加減でまわした方が失敗が少ないかと
思います.


ヘリサート(スプリュー)を挿入して一応完成.



     仕上がりの検査ですが・・・.



垂直性は問題なし.

(手前が修理したもの)



スタッドボルトの間隔ですが,狙いが60mmに対して
59.7mmに仕上がってしまいました.

ボール盤の下穴の位置合わせ精度が悪く0.3mm
内側に寄っていたようです.


これは私の確認の甘さと未熟な腕によるもので
反省しなくてはならないところです.

もっと突き詰めていかないと,より良いものは
生まれないと心底思うところです.



仕上がり寸法



「ムラさん」に仕上がり寸法の話を正直に伝えたところ,このエンジンは比較的と寸法精度が甘いため
大丈夫だと思いますよと心優しいお言葉を頂いたので,作業の際に付いた切り子などをブローして
掃除をし早速お送り返しました.

恐らく大丈夫だと思いながらも結果が出るまでは気になるところ.

すぐに仮組みをして頂いて問題ないと連絡をいただいたのでこれで私の作業はようやく終了です.



後日,ムラさんからマッハ750ssのその後の写真を頂きました.


組み立て途中のエンジン



4サイクルエンジンの集合管とまた違った美しさのあるチャンバー


輝くエンジンは美しいの一言


ムラさんへ
無事エンジンが復活し何よりです.
今回の修理でまた色々な勉強をさせてもらいました.ありがとうございます.
お心遣いにも感謝いたします.

作業の中でフライス盤の必要性をいつも感じさせられます.

より質の高い工作に向けて頑張って貯金をしていきます.

また何かありましたら連絡を下さい.


15年ほど前にはやった旧車ブーム.
表向きの華やかさでマシンを手に入れたものその維持が大変で手放した人も多かったですが,今となっては
それから更に月日が流れ,保守(純正)パーツの有無よりも母体そのものの劣化をどう考えていくかが
カワサキの空冷Z系など代表される旧車に乗る人の課題だと思います.

上手くクリアしていって頂ければと願うところです.


いつもながら長々としたネタで申し訳ありませんでした.




このネタの一話はこちらです.
「カワサキ マッハ750ssの割れた クランクケース・スタッドボルト穴の修理のお話 その1」




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