カワサキW1のシリンダーヘッドのねじ山修理

これまた少し前の修理のお話し.
北海道ツーリング中に泊まったライダーハウス(釧路のH友荘=非常に感じの良いライダーハウスだった)で
宿泊客のW1の調子が悪く,ライダーハウスのオーナー(T代さん)が親切にもエンジンをばらして修理してあげていた.
(ツーリング中にヘッドを開けて修理するなんて,まあある意味すごいお話し.でも北海道らしいと言えばらしいけど・・・.)
どうやらヘッドカバーを固定するネジ山が金属疲労でめげてヘッドカバーが浮いてしまい,その隙間からオイルが
だらだら漏れているというものだった.「内燃機屋に持って行ってヘリサートを入れてもらえば」なんて話しをしてたら,
早速ライダーハウスオーナーご用達の内燃機屋に持ちこむことになった.しかしW1のオーナーといっても20代の
若い子でそんなに大金を持っているわけではないので,なるべく費用がかからないようにと話しているうちに冗談で
「家に送ってくれたらヘリサート入れて修理してあげるよ.値段はう〜ん,一ヵ所500円かな〜.」って話しをしたら
本当にヘッドを送って来る事になった.まあ感じの良い子だったので自宅に帰り着いたら早速修理することにした.


北海道は釧路から送られてきたW1のシリンダーヘッド.
この年式のマシンはよく分かりましぇ〜ん.

まずは,不用なパッキンをスクレーパーを使い慎重し除去し,
その後軽くオイルストーンで面出しを行う.オイルストーンで磨くと
クリアランスが変わるなどと言う人もいるのであくまで「軽く」磨く.
まあヘリサート入れるのにこの作業は不要だが,北海道での
組み付け時にと思いついでに行った.


ボルト穴にちょうど入るドリルの刃(φ7mm)を差しこみ,
ボール盤のチャックのセンターに合うようにシリンダーヘッドを
移動させ,位置合わせを行った.もっと良いやり方があるのかも
しれないが,その辺はご勘弁を.


シリンダーヘッドの位置を変えないように注意しながら,
ドリルの刃をヘリサートの下穴用に交換し下穴加工を行う.
下穴加工に使うドリルの刃は今回M6のネジだったので
φ8.4(8.3)mmを使用した.


同じくシリンダーヘッドの位置を変えないように注意しながら,
ヘリサート用タップに交換し,最初の3山程度まではボール盤の
垂直を利用してまっすぐにタップを立てる.感に頼って手作業で
タップを立てる人もいるが大抵が斜めに入っている.エンジンに
限らずタップを立てるとにはこの方法を使うようにしている.


ある程度ねじ込めば,後は手作業でネジを切っていく.


今回使用した日本スプリュー製のヘリサート(商品名:スプリュー).
M8−P1.25用でネジ穴深さの都合から1.5Dを使用した.


専用の挿入工具を用いて慎重にヘリサートを挿入する.
ハンドルを抑えつけながら回して挿入すると必ず山飛びして
しまうので,どちらかと言えば引き上げながらハンドルを回す.


無事,修正できたネジ山(計4ヶ所)



            


ちなみにこちらが内燃機屋さんで修正したネジ山.ブッシュを圧入してそれに下穴を明けてタップを立てている.
それにしても圧入したブッシュのセンターにネジ穴がないのが???です. まあこんなもんなんでしょうかね.

修正が終わったヘッドはすぐに北海道に送り返してあげました.W1青年はこのツーリングの後,北海道で
知り合った彼女の家に転がり込むと言ってたけどライダーハウスオーナーの情報によると,しばらく付き合ったけど
結局追い出されてこのW1も手放したそうです.これまた北海道らしい 青春物語でした.

旧車にありがちな今回のトラブル.製造から何十年も経ち,その間に何千,何万回とエンジンがかけられその度に
バーンインを繰り返されたエンジンの材質劣化は相当なモノだと思う.カローラ号を含めた空冷Zのエンジンは
今では考えられないほどのオーバークオリティーで作られているが,それとて経時劣化には勝てない.
明日は我が身と言うことで良い勉強になりました.

今では死語になってしまったけど私は「青春」とか「ロマン」とかが好きです.
だれか私と青春してくれませんでしょうか.
ロマンを賭けて何かがしたい36歳です.


青春募集中!!なんてね.





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