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カワサキZZ-R1100D6の
         ツーリング用キャリア製作のお話 前編


我が家には雑種の犬がいます.名前は寅次郎.映画「男はつらいよ」のふうてんの寅さんから頂いた名前です.
家族なのでツーリングも一緒に行きます.
タンクバックや胸元に入るほど小さければいいですが体重は17Kgの立派な中型犬.
そんな寅次郎を乗せて旅するためにZZ-R1100用に製作したキャリア製作のお話です.



ツーリングの荷造りは意外と面倒で,旅慣れた
ライダーの中にはコンテナボックスを使っている
人もいます.  

雨が降っても濡れる心配の要らないコンテナ
ボックスは非常に便利なのですが,その固定も
また意外と大変で,ベニヤ板を敷いたりアングルで
キャリアを自作したりと皆さん工夫されています.


初めてキャリアを作ったのが20年ほど前のこと,
CB750F-C用で当時アーク溶接機しかなかった
ため,鉄の棒材を利用して製作しました.

その後,錆るのが嫌でステンレス材を使うように
なり,TIG溶接機を導入してからはアルミ材で
製作するようになりました.

アルミ材は加工性が良く,軽量で醜い腐食が
ないため作っていても楽しく,バイクのキャリアの
素材としても最適だと思っています.





キャリアの製作で一番悩むのが車体のどこに
固定するかです.

出来ればあまり車体側に加工を施したく
ないので,どこでかに固定するポイントが
無いかをよく考えます.


大切な家族を乗せるのですから,丈夫でかつ,
使い勝手を考えて検討します.



ZZ-R1100Dのテールカウルにはしっかりした
テールグリップ(タンデム用グリップ)が
あるのでこれと,タンデムステップを利用します.



アルミ製のタンデムグリップなので肉厚のある
部分にネジを設けてこれをベースにキャリアを
固定します.

地面に平行になるように,かつ腰高にならない
ように1ミリでも低くなるように切断します.



バイクの取り付けるとこんな感じです.



グリップ部を切断した部分にキャリア固定用の
メネジを作ります.

切断面の中心が肉厚の中心ではないので
肉厚が均等になる位置にケガキを入れています.


小さなことですが一つ一つにその妥当性を
考えるのは大切なことだと思います.



傾斜バイスを使い断面に対して垂直になるように
角度を調整します.


傾斜バイスも工業用の本物は数十万円くらい
しますが,これは輸入品のホビー用なので
7000円もしない価格で売っています.

本物には敵いませんがホビーとしては十分に
使えると思います.
こんなのが安く買えるなって便利な世の中に
なったものです.



一気にあけずに小径ドリルから順に
大きくしていきます.



ネジのサイズはM8ですがネジ強度を
上げるためヘリサートを入れています.



骨組みとなる角パイプを置いて全体像の
イメージを深めます.


なお,使用するアルミはA6063の
25×25×2mmの角パイプです.

私が入手できる25角で一番厚みのある
角パイプになります.



アルミの棒材を旋盤で切削しブッシュ
(カラー)を製作します.



溶接するため材料はアルミのA5056を
選択しています.



角パイプにブッシュ用の通し穴をあけます.



パイプ材をボルトで固定する場合,そのまま
では,パイプ材が変形し十分な締め付けが
できません.

強度が必要な箇所には面倒でもブッシュを
入れパイプ材が潰れないようにします.


このブッシュは荷物を載せる側(表側)に
なるためボルトの頭が出ないように
沈めフライスで座ぐっています.




テールグリップに仮付けし確認します.


設計図を書いてから製作するのが難しい
作品なので,その都度仮組みして全体像を
つかみながら,次の部品を製作して
いきます.

キットパーツを組み付けるのと異なり,
こういったイメージ作業が一番難しいのでは
ないかと思います.




外枠となる部分の製作です.


重心が後になるとフロント荷重が抜けて
ステアリングが振られるので,座った際の
背中(お尻)とのクリアランスを保ちつつ,
出来るだけ前方になるように位置を決めます.


ちなみに前方側の角パイプをこのまま溶接
してしまうとシートが外れなくなってしまうため
形状を検討します.
なので現時点では置いているだけです.



赤い矢印の角パイプがテールグリップに
固定される部分です.


角度や寸法に狂いが無いように溶接定盤の
上に固定しTIGで仮付けしていきます.





シートが外れるようにするために前方側の
パイプを形状を角度切りしてオフセット形状と
なるように製作します.


オフセット量は実際にシートの何度も
着脱させて無理のない寸法を探します.



前方側のパイプが上側にオフセットして
いるためシートを外して隙間から抜き取る
ことができます.


問題がなければ本溶接をします.



後から見たらこんな感じです.



剛性をあげるために補強を入れます.

補強の入れ方ですが,素人の私には
明確な知識がないため,キャリアの
気持ちになって入れる場所を決めています.


単純な平面の四角いキャリアなら四隅などに
短い補強をいれればいいですが,今回は
シートの逃がしを考慮した形状なので
補強も変則な入れ方になっています.



後述しますが今回は脚と枠を分割構造で
製作します.

これは前側の脚の受け部に使う部品です.

一体構造より丈夫に作る必要があるため
4mm厚のアングル材を使用しています.



前側の脚の固定部です.

スイングアームの二本サスの受けの
ような構造です.


アングル材を使用したのは,アルミ板で
単純なプレートを作って溶接するより,
強度が出ると思ったためです.




後ろ側の脚は下からボルトで固定するため
ネジ部にヘリサートを入れたブッシュ(カラー)を
入れて上と下の両面から溶接します.


脚と面当たりして固定させるため溶接後,
ツライチ(面一)になるように表面を削って
います.(写真は天地逆になっています)



表側からみたブッシュの溶接状態です.

出来るだけ平坦になるように溶加棒を
入れぎみで溶接し,表面にビートが
出なくても強度がでるように溶接します.




次はタンデムステップと固定するための脚の部分の製作です.

長くなったので続きは「カワサキZZ-R1100D6のツーリング用キャリア製作のお話 後編」でどうぞ.


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